May 28, 2011

会員制リゾートで憧れの別荘を入れる

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 震災で深刻な打撃を受けた日本の観光業界が、タイからの旅行者呼び戻しへプロモーションを強化している。バンコクで18〜21日に開催された東南アジア最大規模の観光見本市「第9回タイ国際旅行フェア(TITF)」では、自治体と事業者11団体がブースを並べて「ジャパンゾーン」を形成。溝畑宏観光庁長官もトップセールスに訪れ、「安全・安心な日本」を一丸となって売り込んだ。大市場の中で最も回復が早いタイにかける関係者の期待は大きい。【福地大介】

 出展者の中で最も注目を集めたのは、仙台市と東北観光推進機構が共同で構えた仙台・東北コーナーだ。宮城県の観光PRキャラクター「むすび丸」が出迎えるブースには、東北観光の情報を求める来場者がひっきりなしに訪れていた。

 「3、4月の時点ではこんなプロモーションができるとはとても考えられなかった。まるで夢のよう」。仙台市国際経済・観光部国際プロモーション課の伊勢文葉プロモーション推進室長は、予想以上の反応に笑顔がこぼれる。

 同市では5年ほど前から、中華圏や韓国に次ぐ今後の成長市場としていち早くタイに目を付け、地道な宣伝活動を続けてきた。地方都市でありながらタイ国内で仙台の知名度は高く、東北観光の代名詞的な存在になっている。

 それだけに、今回の震災と原発事故によるイメージの悪化が懸念されたが、「震災後にタイの人たちから多くの募金や激励のメッセージを受けた」と伊勢室長。今回の出展では、応援への感謝を直接伝えたいとの思いがあったと説明する。

 仙台の周辺には、被災の度合いが大きく、まだ海外に向けた観光プロモーションを行う余力がない自治体も少なくない。同市はかねてから東北全体を売り込むことで仙台への来訪者を増やす戦略を取ってきたこともあり、地域全体の復興につながればと、東北観光推進機構と合同でブースを構えることにした。

 同機構海外事業部の相澤薫担当部長は「正しい情報を伝え、東北が観光客を受け入れる準備ができていることを知ってもらいたい」と話す。来場者には放射線量の具体的なデータを示して説明するなど、原発事故への不安を取り除くことにも努めた。

 仙台市は8月に入り、タイを含む東南アジアから海外向けの観光プロモーションを再開。タイでは既に地場の旅行会社が東北関連商品を売り出す動きが広がっており、伊勢室長は「観光回復の契機にしたい」と意気込む。用意したパンフレットは最終日を待たずに配り終わる勢いだった。

 ■タイ旅行業界に感謝状

 会場の中心部に設けられたジャパンゾーンには、自治体や公的機関から◇観光庁・日本政府観光局(JNTO)◇北海道運輸局◇仙台・東北◇中部広域観光推進協議会◇静岡県◇和歌山県◇九州観光推進機構◇沖縄観光コンベンションビューロー――の8団体、民間事業者からは◇札幌かに本家◇オリエンタルランド◇ユニバーサル・スタジオ・ジャパン――の3社が出展した。

 経済発展を続けるタイは日本観光の急成長市場とあって、各社・団体とも記念品を配ったり、自治体自慢の「ゆるキャラ」たちを投入したりと、地元消費者への知名度アップを狙った積極的な売り込みを展開。「首都圏や大阪にはない魅力を伝えたい」(和歌山)、「東京から大阪への中継で宿泊する旅行者に、もう1泊、2泊してもらえるよう富士山と地元のおいしい食べ物をアピールする」(静岡)などといった声が聞かれた。

 東京ディズニーリゾートを運営するオリエンタルランドは「タイからの来園者は震災前まで増加傾向にあった。通常営業を再開していることを知ってほしい」(今井啓祐営業三課長)。タイでは香港ディズニーランドの知名度も高いことを意識し、東京へより多くの関心を持ってもらえるよう宣伝に力を入れた。

 ジャパンゾーンの形成に当たっては、スペースの割り当てや出展料の優遇など、TITFを主催するタイ旅行代理店連合(TTAA)による全面的な支援があったという。

 TTAAは今年5月、「Japan……Our Best Friend」と銘打ち、震災後の海外からの訪日団としては最大規模となる約160人の視察ツアーを日本へ派遣。観光業界の幹部が自ら観光地を訪れ旅を楽しむ様子は、同行したメディアを通じてタイ国内で広く報道され、消費者が日本へ抱いていた不安感を払拭するのに大きく貢献した。

 溝畑観光庁長官は20日、「タイの人たちは震災後の復興に力を与えてくれた」とTTAAのチャルーン会長に感謝状を贈呈。ジャパンゾーンのほか、訪日観光を扱っている地場旅行会社のブースを1件ずつ回り、来場者に「日本は安心で安全。ぜひ遊びに来て」と呼びかけた。

 ■回復の兆し、新たな市場も

 震災後の地場業界は、一時的にツアー商品構成の調整を余儀なくされてきたが、今回のTITFでは日本人気回復の兆しがはっきりと見て取れた。

 「どこの出展業者も日本関連商品を売っている」と指摘するのは、アサヒ・トラベル・サービスの三本二朗社長。震災直後は日本ツアーの広告は影を潜め、韓国やシンガポールなどの商品に切り替える旅行会社がほとんどだったが、ここへ来て各社とも再び日本を主力に据え始めたとの指摘だ。

 日本旅行を専門に扱う同社では、震災後3カ月はすべてのツアーがキャンセルになり、6月からようやく再開にこぎ着けた。今でも予約状況は震災前の3割程度にしか戻っておらず、完全回復は「余震と原発次第」だが、全体としては良い方向に向かっているとみる。

 一方、危機を新たな市場開拓につなげた例もある。エイチ・アイ・エス(HIS)バンコク支店の中村謙志ゼネラル・マネジャーは、「当社のハンドリング数、売上高は前年よりも伸びている」と話す。

 同社は震災後、チャーター便専門航空ビジネスエアーセンターのバンコク〜成田便をチャーターして商品化。4月末から5月初めにかけては、震災後初となるタイから東京へのツアーを催行するなど、順調に日本商品を販売してきた。

 秘訣は、思い切った価格戦略だ。日本ツアーはそれまで3万4,000バーツ(約8万7,000円)程度が底値とされてきたが、同社はチャーター便の確保に加え、日本国内の観光業界で震災後に値下げが進んだことを利用し、1万9,000バーツという破格の商品を実現。消費者に「不安はあるが、この値段なら行きたい」と思わせることに成功した。また、これまで日本旅行に手が届かなかった層も取り込むことができ、市場の幅は以前よりも広がっているという
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